御案内した方はサックス奏者である。遠い国の御出身で、隣国との間を往来しながら活動していたのだが、昨今は事情が在ってそれもままならない。そこで御本人の過去に少しばかり縁が在った遠い国で「新たな可能性」を模索しようとしている。「徒手空拳」で何とかしようとしているので、自身としては古いと言えば古い縁により支援をしようとした訳だ。
「事情」の故に異様な遠回りでこの国に着き、いきなり別な「事情」に伴う「隔離」という羽目で、漸く「解放」になった日だった。「隔離」という羽目で、目指すこととした場所を目指して移動に関する段取りが組み立て悪くなっていて、そういう中で<バスタ新宿>でバスに乗車する段取りを整えた。
「一別以来!」と成田空港―具体的な場所の特定に手間取ったが、何とか見出し、待ち受けて迎えることが叶った…―で再会し、嵩張るモノをロッカーに預けるという程度にして、乗車するバスを待つという話しになった。そこでバスターミナルの<バスタ新宿>の近くへ足を運ぶと、力強い歌声が魅力の髙橋一輝が、熱心なファンや歌声に惹かれた人達に見守られながら熱唱していた。自身でも「何か好い歌だ…」と思っていたが、御案内した友人でもあるサックス奏者のカタリーナは些か心を動かされたようでもあった。
「嵩張るモノをロッカーに預けるという程度にして辺りを一寸歩き廻るなどして…」ということにしたのだったが、友人は大事にしている愛用の楽器を収めたケースと手近な貴重品を容れたハンドバッグという持ち物で<バスタ新宿>から再度外に出た。
歌声がなかなかに魅力的な髙橋一輝は少しずつ灯りが目立ち始めた新宿駅南口で熱唱を続けていた。
「一寸、聴きましょう…」と友人は髙橋一輝の熱唱に聴き入る。自身としても場に留まって熱唱を聴くことに異存は無い。実際、時に強く、一部に柔らかい感じの歌唱も混じる調子は心地好いと思った。何やら「好い感じの若いシンガーと出くわして、なかなかに好かった…」と思っていると、友人は何やら手持ちの楽器のケースを開いて演奏の準備をしようとしている。「どないするのや?」という感じなのだが、心惹かれた魅力溢れるシンガーのバックで演奏して盛り立てたいと言い出したのだ。
「何かややこしい話しに?」と危惧したが、友人は「訳が判らない位の大昔から、音楽家というのは、こういうように何となく盛り上がっている場所で歌舞音曲を担って生きて来た存在だ。自身もそういう音楽家の端くれだ…」と酷く張り切っている。
↓自在に演奏可能な状態になった友人は、熱唱する髙橋一輝の脇で「専属バンドのメンバーが盛り上げる」というようなノリで、即興で初めて付き合うような楽曲の間奏を担った。

↓既に一定のファンが在って、ストリートライブに駆け付ける人達が一定数在るようだが、外国人のサックス奏者が不意に現れて、熱唱を盛り立てようと熱演してしまっている状況は、驚きと喝采とで迎えられた。

↓何やら面倒な事も在るのかもしれないと思ったが、色々な曲折を経ながらシンガーとして可能なように活動をしている髙橋一輝としては、仔細は全く不明な「乱入…」ながらも、一定以上の技量の在る演奏家が御自身のライブを盛り立ててくれたということを凄く歓んでいるようだった。

サックス奏者の友人は、「その辺を普通に動き回って差支えない」ということになった「第1日」に、なかなかに素敵なシンガーに出くわし、押し掛けるかのように傍らで演奏したことが酷く嬉しかったとしていた。勿論、長い移動を開始して、「隔離」という羽目になって、愛用の楽器は音を出せない状態を強いられたのであろうから…
即興で楽曲に合わせた暑い演奏を披露するサックス奏者が「乱入…」という感じで現れた中、髙橋一輝は酷く驚きながらも、非常に気持ち好く歌うことが叶ったと驚きながら喜んでいる。そして彼を見守る人達も、不意に現れたそれなりに巧い演奏家に戸惑うと同時に、凄く歓んでいる様子が伺えたとしている。
この時の様子の写真は些か在るのだが…「初対面」という者同士でも、音楽を軸を「あの日は好かったな…」という「好感の環」が拡がるのは善いことだ。