『天保年間の大坂』―<大阪くらしの今昔館>(2016.12.01)

「住まいの歴史と文化」をテーマにした博物館…こういうように聞くと、例えば様々な時代の住宅の様式を紹介するとか、人々が日常的に使っていた道具を紹介するとか、町並みの変遷を紹介するというような展示でもある、ハッキリ行って「地味」な学習の場という雰囲気を想起する…

勝手にそんなことを想いながら、「住まいの歴史と文化」をテーマにした博物館であるという<大阪くらしの今昔館>を訪ねてみた…

地下鉄の天神橋筋六丁目駅から地上への出口の一つとなっているビルに、その<大阪くらしの今昔館>が入っている。それが判って、建物に足を踏み入れた…

1階のエレベーター辺りに<大阪くらしの今昔館>のスタッフと見受けられる方が居たので、見学希望である旨を伝えると、「御手数だが、地下一階のエレベーターに乗る場所で並んで頂いている」との話し…そして地下一階に行けば…なかなかの行列…

行列を差配しているスタッフの皆さん…ハングルやら中国語やらを操っている…英語も日本語も飛び交う…何か外国人旅行者等に非常に人気が高い様子が伺える…

そして行列に加わって、入場することになった際、スタッフの方が「後刻、小学生の団体が校外学習で来るので御了承願う」というような話しもしている。勝手に、やや「地味」な感じで、大阪の街の変遷を学ぶような雰囲気を思い描いていたが…多数の外国人旅行客が溢れて、子ども達の校外学習…「どういう所なのか?」と不思議に思えて来た…

↓“順路”の誘導に従って最初に入った辺りで眼前に拡がった光景である…
The Osaka Museum of Housing and Living on DEC 01, 2016
↑江戸時代の街だ!私の感覚では…“火付盗賊改”の追跡をかわそうとする盗賊団の一味が蠢いているとか…トランペットが印象的なBGMが流れて、悪人を襲撃しようとする“仕事人”がじっと息を潜めているとか…そういう時代劇の場面を思わず思い浮かべてしまう…

画の右上を視れば、ビルの中の広いフロアを使って、街並みを作り込んだことが判ってしまうが、何となく視る分には「江戸時代の街に迷い込んだ」ような気にさえなってしまう…

やがて…「大阪市がビルの9階に、天保年間言いますから、1830年代の大坂の町をこしらえはった…」と大阪の噺家によるナレーション―何とも言えない、口上のリズム感が気に入ってしまった…その場に佇んで、数回繰り返して聴いた…―が聞こえる…“天下の台所”と言われていたような、近世、江戸時代の様子を紹介する、それも“実寸大”に設えた町並みの一部を使ってというのが、ここの目玉展示な訳だ…

↓表も裏も、手を抜かずに丁寧に再現している…
The Osaka Museum of Housing and Living on DEC 01, 2016
↑「映画のセットのようだ」とも思うが、映画では「写らない場所は何もしていない…」こともあるらしいから、これは或いは「映画のセット“以上”」である。建物の内部も、本当に「らしい」感じに設えられ、当時の日用品を模したモノが確り配置されている…

↓挙句の果てに、「屋根の上の猫達」まで作り込んでいる…
The Osaka Museum of Housing and Living on DEC 01, 2016 (2)
↑因みに、この場所に本物の生きている猫を放すと、狭いところにドンドン入り込んでしまって、ややこしいことになりそうだ…その位「リアル」な感じに町並みが設えられている…

こういう作り込んだ「天保年間の大坂」だが…この中を「着物に着替えて歩き回る」ということをやっている…「天保年間を疑似体験」という訳だ…これが外国人旅行者に大人気であるようで、天保年間も既に多くの人口を擁していた大坂と同じように、展示の中には大勢の着物の来訪者が溢れていた…

<大阪くらしの今昔館>は住宅や町並みの変遷を学ぶことが出来る場だが、同時に「昔の日本??」を疑似体験出来る、或る種の“テーマパーク”でもあると思った。そしてここは「市立の文化施設、学習施設」なので、入場料は非常に手頃なものである…着いた時に一寸驚いた行列の理由が判った気がする…

交通至便、愉しくて料金が手頃…意外に好い場所だ…

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