<キョレシ>=タタールの古式なレスリング:<極東“サバントゥイ”>より(2017.07.22)

<サバントゥイ>(Сабантуй)という祭りが在る。

タタール文化圏で催されて来た歴史を有する祭りで、本来は春の農繁期が落ち着いた夏季に行われた農民達の催事であったという。タタールの主要な宗教であるイスラム教等が入って来る以前からの伝統を有するという。

現在では、タタール文化圏限定でもなく、ロシアや旧ソ連で広く催され、農村に限らず都市部でも行われているという。

サハリンに在って、この<サバントゥイ>(Сабантуй)という祭りはタタール文化圏に縁が在る人達を中心に催されて来た経過が在るようだが、今年は<極東“サバントゥイ”>と銘打って、本場のタタールスタンやその他極東管区の方々からタタールに所縁の人達や公職に在る来賓も招いて大々的な催しとして<スパルターク・スタジアム>を会場として行うことになった…地元テレビのASTVで“コマーシャル”まで流していたのだ…

特段に「どうしてもしなければならない…」を抱えるでもない、「久し振りに普通な休日」という展開で、加えて「久し振りに朝から好天」という気持ちの好い感じなので、<極東“サバントゥイ”>が催される<スパルターク・スタジアム>に足を運んだ…

“オープニング”というものが、「直ぐに終わるだろう…」と思っていれば、夥しい数の来賓祝辞が延々と続き、殆ど丸一時間近くやっていたが…漸く始まった催事を愉しく観ることになった。

↓こういう格闘技の大会が、この祭りの呼び物の一つだ…
Сабантуй 2017 (1)
↑タタールの古式なレスリングで<キョレシ>と呼ばれる。

2人の選手は各々の片方の手首に、長めなタオルの片方を巻く。そして上の画のように組み合って、タオルを相手の背中側、腰の辺りに廻し、タオルの端を空いていた方の手首に廻す。

↓そういう状態から、審判員の合図で闘い始める。力比べをする感で、相手を投げるようにして押し倒すとポイントである。
Сабантуй 2017 (2)
↑柔道のように「立った姿勢で組み合う」のでもない。相撲で“水入り”となった後に、行事が両力士を慎重に組ませて取組を再開する場面を思い出した。或いは足を掛けるようなことをしない“グレコローマンスタイル”のレスリングを想起する…

↓大変に好天な中、「1試合3分間」ということでドンドン対戦が続けられた。
Сабантуй 2017 (4)
↑出場者数が紹介されたり、対戦表が掲出されるというようなことは無かったが、方々の選手が出場するトーナメントだ。

3分間で圧したり、引いたりで相手をマット上に倒し、ポイントを重ねて審判員が勝敗を判定する。中には「Чистая победа!」(チースタヤ・パビェーダ!)と宣せられる「一本勝ち!」も在る。(序でに、エントリーした選手が現れないので“不戦勝”というのも視て、苦笑いもしたが…)

始まって間もなくの1回戦を視ていると…日本国内で例えるなら「大学の体育会の柔道部や相撲部の道場に居そうな感じの…」という、堂々たる体躯の「如何にも強そう…」な選手が登場した。この<キョレシ>は、オリンピック種目のレスリングのように体重別ではなく、“無差別級”なので、堂々たる体躯の「如何にも強そう…」な選手の相手になったのは体重差が少し大きい感じの選手だった。その対戦で「Чистая победа!」(チースタヤ・パビェーダ!)と宣せられる場面を初めて視たのだが…「開始7秒 一本勝ち」というような感じで、瞬時に決着で驚いた…

↓対戦が重ねられ、3位決定戦、決勝戦となって行く…
Сабантуй 2017 (28)
↑出場選手を呼び出す係のマイクを手にした人は、「もっと声援を!」とか「〇〇選手は〇〇出身だ!」と集まっている観衆にアピールをし、何か場が盛り上がる。

結局、審判員が時間一杯闘った両者のポイントを判定する以外に「一本勝ち」も在ることを示してくれた、堂々たる体躯の「如何にも強そう…」な選手が優勝した。サハリンで“グレコローマンスタイル”のレスリングをやっていて、重量級で活躍している選手のようだ。コーチや仲間達が「彼なら、方々の猛者達を捻じ伏せてくれる…」と期待された“サハリン代表”だったようだ。

↓そしてこれが表彰式…右端が3位の選手、その左は2位の選手、催事の実行委員長である女性を挟んで優勝した選手…2位、3位の選手達はキルギスタン出身だったようだ…
Сабантуй 2017 (30)
↑伝統的に、<キョレシ>の大会で優勝した“勇者”には「生きた羊」を贈ることになっているのだそうだ。流石に力自慢で、羊も40㎏前後は在るらしいが、ガッチリと脚を押さえて抱え上げて見せてくれた。これも“勇者”の伝統的なポーズらしい…他方、この上位3人には提供を受けたテレビセット等の商品や賞金も授与された…

これまで「生で観る機会」など無かった催しを観ることが出来た!何か嬉しい感じである…

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