札幌駅の傍、何度も利用している宿で寛いでいる。やや遅めな到着で、札幌駅に着いて戸外へ出てから、近くのセイコーマートに立寄って飲物等を求め、その足で宿に入って寛いでいる。何やら「長い一日」という感だ。
五条大宮の宿で朝を迎え、宿の朝食を少々頂いた。「朝食前から…」という程の動きをするまでもない日である。天候の塩梅も観ながら、散策を愉しみ、フライトに遅れないように大阪空港(伊丹)へ向けて、大阪モノレールへの乗換駅に至れば好い訳だ。
「五条大宮」とは、東西に延びる五条通と南北に延びる大宮通とが交差する辺りである。五条通を東へ進んでみることとした。東の烏丸通に至れば地下鉄の五条駅が在る。そこから更に東進して川の畔に辺りに至れば京阪の清水五条駅だ。五条駅や清水五条駅というのは、近年の京都訪問の中でほんの少々は親しんでいる。「とりあえずの目印」には好適というものだ。
何度も立寄っている京都だが、様々な時代の文物が折り重なっている街だけに、興味深いモノは尽きない。再訪も初訪問も混ぜて、些かの面白そうな場所を見学し、大阪空港(伊丹)への道中でも道草をするという程度の想いで宿を発ったのは朝の7時45分頃だった。戸外へ出れば小雨…愛用のキャップは確り被り、上着も着込んで何となく歩き始めた。
五条通を東進し、鴨川に至って、更に進んで六波羅蜜寺に立ち寄った。空也上人―念仏を唱えると、唱えた字毎に阿弥陀仏になるという、伝説を立体化したモノ―や平清盛―教科書等にも採用されている非常に有名なモノ―や弘法大師や仏師の運慶等、素晴らしい彫像が集まった宝物館を見学した。人物の実寸またはやや小さい程度の大きさなのだが、何やら「生きている?」というような見事なモノばかりだった。
そして六道珍皇寺…あの世とこの世とを往来したという伝承が在る小野篁に所縁の寺で、見事な薬師如来、閻魔大王、小野篁の像が在る。
雨はなかなか止まない。本当に「御近所の御常連が寛ぐ場所」という「昭和の風情…」な喫茶店を見付けて、些かの休憩とした。
更に雨の中、弘法大師が善女龍王を勧請して雨乞いを成功させたという伝承が在り、嘗ては平安京の天皇の庭でもあったと伝わる神泉苑を訪ねた。地味かもしれないが、その弘法大師の伝承に興味が在ったので立ち寄り、眼前の二条城には敢えて寄らなかった。
二条城も結構だが、その後に足を運んだ三十三間堂は「何故、これまで訪ねていなかったのか?!余りに愚かだった…」と思った。実に素晴らしい!!堂内に入れば「本当に千体!!」の千手観音が並ぶ空間、千体もの仏像が醸し出すモノに圧倒された。そしてそれらを守護するような30体の像だが、これも伝承されている神霊を擬人化したという様々なモノが、「こういう顔付の人…居そうだ…こんな感じの表情も在りそうだ…」と見事なモノだった。そして「通し矢」の廊下も、硝子越しながら拝見出来た。修学旅行の生徒達という姿も多く見受けられた。
この頃には雨が強まっていた。それでも歩き続けた。三十三間堂まで至れば智積院が近い。あの境内で、紅く染まった葉が雨の雫に湿る様を眺めた。
と…ここまでで「昼食のピークを過ぎる」という時間帯になっていた。京阪電車の七条駅の方へ向かう中で「昼食?」と思ったのだが、その思ったタイミングにステーキの店が眼前に現れた。リーズナブルな料金で、良質な赤肉のステーキを頂き、日本酒も別途頼んで頂いて寛ぎ、御店の方とも言葉を交わして愉しかった。
何か…「充実!」と思いながら、京阪電車で門真市駅を目指した。存外に時間を要した。そして大阪モノレールに乗り換えた。未だ雨が降り続き、その雨も少し強めにさえなっている。敢えて道草はせずに大阪空港(伊丹)に至ったが、既に午後4時半を伺うような時間帯だった。
フライトは午後6時40分に発つ。搭乗可能になるのは6時20分頃である訳だが、手続を済ませて空港ビル内のカフェで一息入れ、保安検査を経て案内を待つことにした。「悪天候で引き返して関西空港に下りる場合も在る」という案内ではあったが…別段に問題は無かった。
フライトには問題は無かったが、自身には一寸した問題が…愛用していて、今般も使っているバッグのファスナーが傷み、閉まらなくなってしまった。飛行機の中で気付き、客室乗務員さんに乗客のゴミを集める場面で使うゴミ袋を1枚頂き、バッグを包んだ。応急措置の雨除けカバーという訳だ。妙な様相のバッグを持っていたが、新千歳空港のビルで不審者呼ばわれはせずに済んだ…
そうして雨の京都、雨の大阪空港(伊丹)と動いて雨の札幌に至った訳だ。何やら「帰国…」という風情ではあるが、同時に奇妙な感じだ。京都でも「14℃で雨」ということだったが、札幌でも「13℃で雨」と大差が無い…
とりあえず…セイコーマートでウィスキーの小瓶を求め、旅の充実と安着を祝っている…
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