「六道の辻」という場所が在る。訪ねてみた六波羅蜜寺から然程遠くもない辺りである。
「六道」(ろくどう)?これは仏教の教義で謂う地獄道(じごく)・餓鬼道(がき)・畜生道(ちくしょう)・修羅(阿修羅)道(しゅら)・人道(人間)・天道の六種の冥界のことである。
人は因果応報(いんがおうほう)により、死後はこの六道を輪廻転生(りんねてんせい)する(生死を繰返しながら流転する)とされている。
この六道の分岐点で、いわゆるこの世とあの世の境界となる「辻」、「冥界への入口」が「六道珍皇寺の境内の辺り」とされて来た。
そこで「六道の辻」という場所が在るのだ。
↓六道珍皇寺の門前に、「六道の辻」と刻まれた石柱が確りと据えられていた…
↓上述の「六道の辻」の手前にもう一つ石柱が据えられている。「小野篁卿舊跡」と在る。「舊」は「旧」のことだ。
↑ここは小野篁(おののたかむら)という人物に所縁の旧跡であるということである。
小野篁(802-852)は嵯峨天皇の時代の官吏で、参議にまで上っている。故に指名に「卿」という文字が添えられている。傑出した人物であったというが、昼は朝廷に出仕し、夜は閻魔庁につとめていたという奇怪な伝説が在る。篁が冥土へ通うのに使ったという井戸が伝えられているのだそうだ。
↓不思議な言い伝えに彩られた、静かな寺を訪ねてみた。
↓冥界とこの世とが交わる辻…何か不思議な空気感が漂う…
この日は<寺宝展>と称し、薬師如来像、閻魔大王像、小野篁像が観易い状態で公開されていた。それを観ることが叶ったのは好かった。
↓庭をゆっくりと拝観した…「撮影は御遠慮を…」と規制が在るが、小野篁の伝説の井戸は極一部が覗いている…
↓しっとりと湿った感じ…こういうのも悪くはない…
「六道の辻」ということに関して、平安京の東に在ったという鳥辺野の墓所に近く、葬送の道筋なので「野辺の送り」が催されていて、辺りが「人の世の無常とはかなさを感じる場所」であったことや、小野篁の言い伝えが相俟って謂われるようになったものなのであろう…
何か「命」というようなことに関して、漫然と想うような場面が如何したものか増えているような気がしないでもない昨今、「冥界」に関する言い伝えに彩られた寺に立寄ってみたのは少し興味深かった。
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