十勝岳を遠くに望む…:上富良野の風景…(2024.05.12)

『泥流地帯』『続 泥流地帯』という、実質的に「上下巻」のようになっている小説が在る。

上富良野の少し北に在る美瑛を訪ねたことが何度も在る。美瑛で人気の「青い池」だが、アレは十勝岳の噴火災害を想定した防災工事の結果として出来た池で、見た目が面白いので評判になったという場所だ。その「十勝岳の噴火災害を想定した防災工事」という中、記録されている中で最悪の被害が発生した「大正泥流」こと1926(大正15)年5月の災害という時期に題材を求めた物語として『泥流地帯』、が知られているということが話題になる。

『泥流地帯』『続 泥流地帯』について美瑛で聞いた話しが切っ掛けで知ったのだが、物語の主な舞台となるのは上富良野である。作中には主人公の兄弟の隣人として、実在の村長をモデルにした劇中人物が登場する。未だ幼い村長の娘達が主人公達に懐き、そえが契機で隣人としての交流が始まる。小学校の教員として勤める弟に対し、「あんちゃん」こと兄は災害で手放された水田の復興に必死に取組み、村の農地の復興に熱心な村長と共鳴するのであった。

この劇中人物のモデルとなった村長が建て、泥流災害の際に多少の被害を被りながらも残ったという貴重な家が、移築されて資料館になっている。上富良野に限らず、北海道内では方々の人達がグループになって入植し、開拓をして農業に従事というような例は多く在る。劇中人物のモデルとなった村長の吉田貞次郎自身も、両親の入植に伴って上富良野にやって来て育ったという人である。「三重団体」と呼び習わされ、三重県出身者のグループが開拓した地域が在る。入植者達の開拓の後、泥流災害からの復興は「第2次開拓」というような事柄な訳で、そういう経過を紹介している資料館が、「三重団体」が活動していた辺りの一隅に在る。

その資料館だが、上富良野駅から3km弱の場所だ。旭川・富良野間の道路に出て道なりに進むと在ると、地図を見て知った。朝、上富良野駅に着いてからゆっくり歩いて資料館に向かい、見学をしてから上富良野駅側へ引揚げ、更に歩き廻って昼頃の列車で旭川へ引揚げると好いと思い付いた訳だ。

前置きが非常に長くなってしまった。

↓駅から資料館を目指した際に足を停めて眺めた様子だ。
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↑遠くの山並みの中で、薄く噴煙が見えるのが十勝岳であると見受けられる。

泥流災害から懸命に復興し、上富良野は「豊かな農業地域」というような様相になっている。遠くに十勝岳を望む中に種々の畑等が広がっているという様が「上富良野らしい」と思った。

↓多少、雲が多い。が、雲の感じも面白いと思った。
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旭川・富良野間の道路の端、歩道を進んでいたが、目指す資料館が間違いなく在るのか不安も覚えた。「770m」と案内看板で出ていて大いに安堵し、歩調が多少速まった。

↓資料館を訪ねた後、また上富良野駅側へ歩いた。再び「上富良野らしい」と思った様を眺めた。
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↓薄く噴煙が上がる山を望みながら、人々の営みが営々と続くのだ。
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正直、後から「足取りがやや重くなる…」という程度に歩いたのだが、御蔭で上富良野が忘れ難い場所になったように思う。馴染の薄い地域は、歩き廻ると発見も多いと思う。

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